by Rainbow School
<< August 2020 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 死から目をそむけているから、自分自身の生命を考えなくなる | main | 自分がよくないと思ったことは、一度経験すれば充分だ >>
お父さんの大きな愛 ー『最新DNA型鑑定 防げなかった冤罪』を観て
昨年1月、鹿児島で逆転無罪判決が下された冤罪(えんざい)事件のことをご存知でしょうか。このニュースを知った時には、今のような開かれた時代であってもなお、警察・検察の不実というものがあるんだなと、恐ろしくなりました。誰かが気がついている筈なのです。その公判維持が真実ではないということを。自分たちが嘘をついているということを。

でも気づいていながら、誰ひとりボタンの掛け違えを正そうとはしません。そうさせるものは、いったい何なのでしょうか? 組織の圧力と保身のために、何の罪もない若者の前途を狂わせて、それで平気なのでしょうか? どうして、正直になろうとしないのでしょう? そもそも正直でない者が、どうして警察や検察の仕事に就いているのでしょう?

ハートネットTVで、この事件を取り上げた『最新DNA型鑑定 防げなかった冤罪』という番組があり、とても興味深く観ました。しかし観ているうちに、私の興味は別の方向に引き寄せられて行きました。この冤罪の被害にあった青年の、その後の姿の明るさ、爽やかさ、潔さ、賢さです。

身に覚えのない罪で2年4カ月間も拘置され、その間はきっと大変な葛藤があっただろうと思うのです。でもそれを乗り越えているのは素晴らしい。

事件当時、青年は鹿児島市にあるナイトクラブで店長代理をしていました。そして、ホステスを酔いつぶさせないためと、店の売上げを上げるために、彼が飲み役を引き受けていました。それが仇となり、その日シャンパンのラッパ飲みをしたところで、彼は前後不覚に陥ってしまいます。その後で、ある少女の訴えから、レイプ犯にされてしまうのです。

この少女の被害届けというのもおかしなもので、よく状況を観察すれば虚偽であることが判りそうなものなのに、警察はそうしませんでした。そして少女の訴えを鵜呑みにし、当時20歳だったこの青年を逮捕。杜撰なDNA鑑定の結果を根拠に、一審の判決が下って、青年は懲役4年の刑に処せられてしまうのです。

青年にしてみれば、当日の記憶がない。彼にとってそれが最大の不利です。ヤンチャして酒をがぶ飲みしてしまったことをひとしきり反省すると、彼は拘置所で猛勉強し、DNA鑑定に関する書物を読み漁ります。そして、弁護士の力を借りながら再鑑定への道を切り開いて行くのです。「それまで本を一冊も読んだことがなく、活字自体がイヤだったのに」と、彼は笑って当時を振り返るのです。

少女に対しては「人を恨んでもいいことはないんで、気にしないようにしています。」と彼は言います。そして「願うことならば、謝って欲しい。そして自分がしたことの重大さ、人の痛みというものを解って欲しい。」と言うのです。この意味は深い。青年にとっては全く理不尽ではあったけれども、彼自身は、その事件を、人の痛みが解る人間になることと、自分の知識向上の機会へと変えたのです。

そして弁護士さんも、この少女を赦していました。もはや二人は、償いを求めているのではないのです。その少女に、正直になれるチャンスを与えているのです。正直にならない限り、この少女は、この先もずっと痛みを抱えて生きていかねばなりません。警察、検察の関係者も同じです。ごまかし続ける限り痛みは続くのです。

この青年の賢さを育んだのは、お父さんの存在にあることもよく解りました。息子を信じ、毎週、拘置所に通って励まし続けたお父さん。逆転無罪が決まって涙に暮れる息子に、お父さんが真っ先に言った言葉がステキでした。「よかったね。これでまた、次のステップに進もうよ。」お父さんが大きな愛の人だったから、青年も愛の人に育ったんだね。