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居酒屋文化は万国共通
呑み屋というものの雰囲気が好きで、今までいろんなところに行きました。10年くらい前までは「居酒屋同好会」と称して、同好の士数名と都内のあちこちを探索して歩きました。選定基準の第一は、とにかく古いということです。古いということは、生き残って来た理由がそこにあるわけで、一見さんにとっては最も確かな基準となるのです。

でも、そうやって体験したお店の半分は、今では、おそらくもうなくなっていることでしょう。店舗の老朽化や世代交代などの問題もありますが、人々がお店に求めるものがガラリと変わってしまった。若い人は、小奇麗で小洒落た内装がウリの、無国籍の創作料理を出すチェーン店に行くようになってしまった。情報源も、インターネットの☆の数で判断するようになりました。

私の年代くらいが、たぶん本物の店と味を知る、最後の世代になるのでしょう。(ちなみに、小津安二郎の映画を観れば、古きよき店というものが解ります)若い人にとっては、昭和レトロ感覚は新鮮な部分もあるらしく、最近、昭和レトロ風の作りの居酒屋やラーメン店を時々見かけますが、それらはやっぱり「風」でしかないのです。本物ではない、所詮はニセモノです。

いったい何が違うかと言えば、店の経営者、つまり大将の心意気が、自分が知る昭和時代の店とはまるで違う。そもそも、昭和レトロ風の店づくりをするというところが、すでにウケ狙い、トレンド狙いであって、「美味しいものを、安く提供して、みんなに喜んで貰おう」という発想じゃないのです。

居酒屋評論家の太田和彦さんは、よい店の定義として「いい酒、いい人、いい肴」と言っておられます。この三条件に関しては、私も全くその通りだと思いますが、私の場合は「いい人」がトップに来る。店は、大将やおかみさんの想い、考え方、技術がそっくり出る場で、それは大将やおかみさんの「表現」なんです。

なぜそこを味わおうとせずに、ブラックな経営者のチェーン店に行って、アルバイトが出すチンした料理に人々が向かうのかが、私にはさっぱり解りません。友人の一人に、どこへ行ってもマクドナルドに入る男が居て、「どうしていつもマクドナルドなのか?」と訊いてみたことがあります。すると「安心だから」という答えが返って来て、ビックリ仰天しました。

「安心」という感覚が、もう私などとはまるっきり違うんですね。私は大企業など信用していないから、店の大将やおかみさんという人物を見る。ところが彼は、今まで一度も会ったこともない、大将やおかみさんに接するというのがすでに不安なんです。そこで、いっつもマクドナルドへ行く。

世界入りにくい居酒屋』という番組があって、毎週楽しみに観ているのですが、つくづく居酒屋文化というものは世界共通だなぁという感じがします。これを観てハッキリ判るのは、太田和彦さんの言う通り、「いい人」が絶対条件なんですよね。オーナの人柄に惹かれて客が集まって来て、疲れやストレスを解消する楽しい時間を、大勢で共有する。

この感覚は万国共通で、こういう場で庶民同士が交流をすれば、世界から戦争なんて無くなると、本気で思います。私が突然ぶらりと行ったとしても、「おう、日本人、よく来た。一緒に呑もうぜ」という話にすぐになると思う。日本の古きよき居酒屋は壊滅状態だから、もうこうなったら、海外に行くしかないか。

いけねぇ、旅費がない!