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『Powers of Ten』の着想 ---- イームズ夫妻と大橋正雄さん
インテリアに関心のある方なら、イームズ夫妻という名を聞いて、「イームズチェア」を真っ先に思い浮かべられることと思います。これは1950年に、プラスティック素材を用いた世界最初の大量生産品として作られた、簡易な椅子です。シンプルで飽きのこないデザインであることから、現在も非常に人気があります。

大量生産というと、粗悪品を思い浮かべられるかも知れませんが、この時代は工業化に大きな夢があった時代で、イームズ夫妻はマスプロダクションのシステムと、生活を革新させる優れたデザインのコラボレーションというものを着想したわけです。日本でも同様の試みをした優れたデザイナーとして故柳宗理さんがいます。

このイームズ夫妻はフィルム・メイカーとしても知られ、これも優れた着想によって、革新的かつ実験的な映像作品を数多く残しています。その代表作として知られているのが『Powers of Ten』です。この作品についてはとりわけ執着があったと見えて、最初のパイロット版から、モノクロ版、カラー版と、全く同じコンセプトでブラッシュアップを図っています。

私は、このモノクロバージョンを今から50年近く前に見て、度肝を抜かれた記憶があります。コンピュータ・グラフィックスなどなかった時代に、光学的処理だけでこれを創ったのですから、もの凄い執念だと言えます。

さてこの『Powers of Ten』の「Ten」とは、「10」のべき乗(累乗)のことを意味しています。10×10が2乗、10×10×10が3乗です。10×1/10はマイナス1乗となります。これは、非常に広大な距離を表したり、逆に極微の距離を表したりするのに便利で、「0」をいっぱい書かなくても済むんですね。ま、とにかく、映像を観ていただければ意味が解ります。


最近になって、私はこの映像が、ヘルメス文書の「下なるものは上なるものの如く、上なるものは下なるものの如し」を、まさに映像化したものであるということに気づきました。この言葉は、宇宙というものが、極大から極小まで相似形で出来ていることを語っています。別の言葉で言えば、ホロニック構造です。

以前に、人体はマイクロコスモス(小宇宙)であるということを書きましたが、それも同じ意味です。『Powers of Ten』では、公園で寝ころがる男性を出発点に、先ず10倍、また10倍と拡大して行き、いったん戻ったあとに今度は10分の1、10分の1と縮小して、原子レベルまで迫っていきます。(この作品が発表された当時は、クォークの発見がまだなかった)

そしてこれも驚くべきことに、同時代に、同じ着想を持っていた日本人がいたのです。それが故大橋正雄さんです。大橋正雄さんは電電公社に勤めていたサラリーマンで、民間の一研究者でしたが、物の大きさと振動数との関係をべき乗のグラフに乗せて、イームズ夫妻と同じく、極大から極小までプロットし、それらが一直線に並ぶことを発見しました。

今は完全に忘れ去られた存在となっていますが、この着眼は、もっと評価されてしかるべきものだと私は思います。とにかく、このようにして日米のユニークな着眼点を持った人が、共にヘルメス文書に書かれてある言葉を別の形で表現しようとした。これは偶然ではなく、二人とも、同じインスピレーションを受け取ったのだと私は思います。